フォーク 新しい出会いに夢のせて
「んふふ、パイナップル。」
大野がパイナップルにフォークを差す。
「ニノがね、俺のパイナップルの言い方がおかしいって言うんだよ。」
パイナップルの言い方?
おかしかったかな?
「パの破裂音がすごいんだって!」
大野がパイナップルを頬張る。
柔らかそうな頬が動いて、パイナップルがより一層美味しそうに見える。
「そんなことないと思うけど……。」
「んふふ、そう?……パイナップル。」
そうかな?そんなにすごい?
そんなこともないと思うけど。
「普通に聞こえる。」
「ふふふ、普通?」
「うん。」
見つめ合って、こそばゆそうに笑う大野。
なんだ、この空気感。
もうすでに付き合い立てのカップルみたいじゃないか!
このまま流れに身を任すか?
いや、ダメだ!
ここはちゃんと告白されて断らないと!
大野、続きを言ってくれ!頼む!
大野はゴクッとパイナップルを飲み込んで、真ん中に乗ったイチゴにフォークを差す。
「今日、楽しいね。」
楽しいよ?
楽しいけど、この時間ももう終わり。
もう一緒に遊びに行ったりできなくなるんだよ。
こんな風にデートみたいには。
それでも俺には、みんなで一緒にカラオケ行くみたいな時間は残されてる。
それで十分。
例え、この気持ちが伝わらなくても、それで十分だって、覚悟決めて来てるんだから!
「俺、翔子ちゃんが好きだよ。」
おっと、突然来た!
「一緒にいればいるだけ、どんどん好きになっていく。
不思議だよね。」
大野がイチゴを口に入れる。
小さな唇がモグモグと動く。
不思議なもんか。
俺だってどんどん大野を好きになってるよ!
だから断るんじゃないか!
ずっと翔子でいられるなら、それだって構わないと思うよ。
でも、ずっと翔子ではいられない。
だから!
「それと同じにね、翔子ちゃんのお兄さん……、
櫻井君ともいればいるだけ好きになっていくんだ。」
え……?
「今までの友達とはちょっと違くて……。
翔子ちゃんと一緒にいるのと同じような感覚になるんだ。」
大野がじっと俺を見つめる。
大野……まさか、気付いてる?
「だから悩んでた、ずっと。俺が好きなのは翔子ちゃんなのか、櫻井君なのか。」
え……ちょっと待って?
なんかだいぶ話が違う……。
大野が恥ずかしそうに笑って、ラテをスプーンで掻き混ぜる。
「翔子ちゃんのお兄さん、カッコいいもんね。
いつでも周りをちゃんと見てて、気を配って、友達想いで……。」
なんだそれ!?
いや、大野に褒められて嬉しいよ?
嬉しいけど、そこじゃない!
「あんなカッコいいお兄さんだもん、みんなが好きになって当然。
翔子ちゃんの自慢のお兄さんだもんね。」
大野がニコッと笑う。
俺、翔子で俺を自慢したことないけど!
「もちろん、翔子ちゃんも……。
お兄さん、翔子ちゃんの話する時、恥ずかしいのかつっけんどんなしゃべり方するけど、
大事にしてるから、男が周りをウロチョロするの嫌なんだよね。」
え?ええっ!?
大野、それ勘違い!大勘違い!
「二人とも魅力的だから。」
ラテを啜る大野は王子様感キラキラ。
なのに言ってることには、ハテナしか浮かばない!
「このまま翔子ちゃんに行っちゃおうかって思ったんだけど……。
それは自分の気持ちに嘘突くことになるし、翔子ちゃんに誠実じゃないと思って……。」
大野はスプーンを置いて、背筋を伸ばす。
「俺、翔子ちゃんが好きです。
でも、お兄さんのことも同じくらい好きです。
だから……この気持ちに答えが見つかるまで会えません。
でももし見つかったら……もう一度会ってもらえますか?」
ええええええっ!
待って、待って!
ちょっと順序立てて考えるから!
必死で顔を作り、頭の中を整理する。
大野は翔子が好き。
でも同じくらい俺が好き。
で、どっちが好きかわからないから、答えが見つかるまで告白を待ってくれって?
告白、しなきゃよくない?
何も言わず両方と会い続けてわかってから告白でよくない!?
それが……できないんだよな、大野には。
ちゃんと誠実に相手に向き合いたいんだよな。
ほんと、いい奴。
本当に妹がいたらこういう奴をオススメする!
でもおかげで俺のシミュレーションは見事に木っ端みじん。
まさかこう来るとは!
侮れない男だよ、さすが大野!
てかお前に男同士の溝も壁もないんだな?
そのことに面食らって、思わずラテを握り締める。
ってことはよ?
大野も、俺と翔子との三角関係に悩んでた!?
今も悩み続けてる!?
それ、俺も大野も悩む必要なくない!?
フォークはリベラリズムの夢を見るか?
みなさん、
『アルプスの少女ハイジ』に実写版の映画があったってご存じでした?
過去にも何度か映画化されてたようなのですが、
ダディーがコロナ疑惑で部屋に閉じ込められてた時、この一番最近の2015年版のを
子供達と一緒に観ました。
映画自体は2015年に公開されたから、
そんな古い映画ではないのですが、
なんせ、時代設定が古いんで、
そういう映画は嫌がられるかな?
って思ったけど、
トレイラーを観たら、
ストーリーラインにすぐに食いついてきて、
最後までとっても楽しく観ました!!
『サウンドオブミュージック』の時も
そうだったなぁ~。
この実写版がさぁ~、
ほんっとに、あのアニメ版のキャラクターに
よく合うキャスティングで、
このハイジの子が、
お目目が大きくて、笑うと口角が
漫画見たいにクイッと上がって可愛いの~
我が家では専ら、コボちゃんが大好きな、
近所の関西人Cちゃんちの息子に似てるって
話で沸いてたんだけど、
ま、これ、Cちゃん家族にしか
変わらないネタですな。。。
ね!?ペーターもアニメの感じ!
クララも!
これ、ロッテンマイヤーさん!!
そこで、
映画の1シーンに、
おじいさんがハイジに温めたチーズの表面を
パンの上にサッと削り流して、
ハイジが食べるシーンがほんの数秒あるんだけど、
わが子たちは見逃さなかった!!!
そう、これが前冬日本に帰った時に、
東京でおババといって食べたラクレット!!
でもさ、
あんなデッカイの買うわけにいかないし、
売ってもいないんで、
ホールフーズで小さい塊を買ってきた。
(写真右下。左上はフォンデュでよく使うグリュイエール)
ガンガンそれだけ食べちゃいそうだったので、
お野菜と、チキン、ジャガイモを用意して、
(きれいな色だったから思わずパチリ)
で、暖炉もないしさ、
こんな小さな塊をどうしようかと思ってネットでみたら、フライパンで溶かして皿に流してたんで、
その方法で。
おぉ~、溶けてグツグツしてきたっ!
脳みそまでよヨダレマックスになっちゃった
子供達の歓声で食卓が盛り上がる瞬間!
で、こんな感じに。
トロ~~~り。
パクリ、
~~ん、
(ほっぺを両手で押さえて)
美味し~~ぃ!!!
って、流れを想定していたマミーとしては、
ですね・・・
実際は、
みんなに配り終わって、
「では、いただきまーす!」してる間に、
チーズが冷めて、さっさと微妙に硬くなっちゃうのよ!!!
だって、
まだ夕食時にも25度程度で、
しかも最近すごい湿度のハワイじゃ、
食卓の上のシーリングファンをブンブン回してるわけよ。。。
それで結構スープなんかも冷めるの早いのは
分かってたけど、
チーズはもうね、
瞬殺、イチコロ!!
そこで、溶かて皿に流しては、もらった人からどんどん食べる方式にして、3人配り終わったころには、1人目が「もっとちょうだい!」ってなって、それが繰り返されるので、
軽く「わんこそば風」な流れになって・・・。
アルプスの山小屋で火の前で
ゆっくり流れる時間の中で・・・
という、映画の1シーンが
ただの盛岡でそば、みたいな忙しさで・・・。
でも、まぁ、みんな、
「美味しかった!楽しかった!またやろう!」
って言ってくれたから、
良かったことにしよ~。
いや、またやるかどうかは・・・。
『アルプスの少女ハイジ』って聞くと
何故かカルピスが頭の中に出てくる世代の方は、
ぜひこの映画観てみてね!
小さな子供から13歳も楽しめま~す!
ラクレットは、
日本に帰るとおババがよく作ってくれる、
硬めに火を通した一口大のコロコロな
レンコンを、ブチュっとつぶして、
それをフライパンで
ラクレットと和えて食べさしてくれる、
あれが一番美味しいなぁ~。
あ~
日本に帰りたいぜよ~